筆者の問題意識:なぜ今、仲間評価なのか

この論文Opening Pandora’s Box: How does peer assessment affect EFL students’ writing quality?の筆者であるエレニ・メレティアドゥ氏は、ロンドン・サウス・バンク大学ビジネススクールに所属する研究者です。彼女が取り組んだのは、外国語としての英語(EFL)を学ぶ中等教育段階の生徒たちに、ピア・アセスメント、つまり仲間同士で互いの作文を評価し合う活動が、どのような効果をもたらすのかという問題でした。

メレティアドゥ氏が研究の舞台に選んだのは、地中海に浮かぶキプロス島の公立中等学校です。キプロスでは、英語は重要な外国語として位置づけられており、将来のIGCSE(国際中等教育修了証)試験に向けて、生徒たちは英作文の力を磨く必要があります。しかし、多くの生徒が英作文に対して否定的な態度を持ち、保護者も含めて試験での成績に不満を抱えているという状況がありました。

従来のキプロスの英語教育では、評価は専ら教師の責任とされてきました。生徒も教師も、代替的な評価方法についての経験が乏しく、生徒たちは受動的な学習者になりがちでした。一方で、ヨーロッパ全体の教育政策としては、より能動的で責任感のある生涯学習者を育成することが求められています。こうした背景のもと、仲間評価という手法が注目されるようになってきたのです。

仲間評価とは、生徒たちが互いの作品を読み、評価し、フィードバックを与え合う活動を指します。これは単なる評価の分担ではなく、「学び方を学ぶ」ための有効な手段と考えられています。自分の作品を客観的に見る力、他者の作品から学ぶ力、そして建設的な批評を与える力は、いずれも21世紀に求められる重要なスキルです。