はじめに~テストの歴史の中で見落とされてきたもの

言語教育の研究領域において、テストと評価の問題ほど頻繁に論じられるテーマはほとんどありません。学習者の実力を測定する方法、テストの信頼性や妥当性、評価基準の客観性など、言語テスト研究は40年近い歴史の中で多くの重要な成果を積み重ねてきました。しかし、その一方で、ある極めて重要な領域が驚くほど看過されてきたというのが、本論文Accommodations in language testing and assessment: Safeguarding equity, access, and inclusionの出発点です。

United Kingdom のベッドフォードシャー大学のLynda Taylor教授と、Trinity College London のJayanti Banerjee教授によって編集された本特集号の序文が取り上げているのは、障害や妊娠、授乳などの人生の特殊な状況にある学習者が言語テストを受ける際に必要とされる配慮についての研究が、あまりにも少なかったという、いわば学問的な「盲点」です。

250を超える論文が掲載されてきた言語テスト研究の歴史の中で、この領域に焦点を当てた論文はわずか12篇程度にすぎなかったというのです。これは単なる統計的な事実ではなく、学問の世界が無意識のうちに何を重要だと考え、何を周縁化してきたのかを示す、極めて象徴的な数字だと言えるでしょう。