スイスの研究者が取り組んだ課題

チューリッヒ大学教育学研究所のYves Karlen氏は、大学教育の現場で長年感じていたある疑問に向き合いました。それは、なぜ同じ授業を受けている学生の中でも、学術論文を書く能力に大きな差が生まれるのかという問題です。文法や語彙の知識は十分にあるはずなのに、実際に論文を書き始めると手が止まってしまう学生がいる一方で、スムーズに質の高い文章を書き上げる学生もいます。この差はどこから来るのでしょうか。

Karlen氏が注目したのは、「メタ認知的方略知識」という概念でした。これは簡単に言えば、自分の思考過程について考える力、つまり「どのように考えればいいかを知っている力」のことです。たとえば、料理のレシピを知っているだけでなく、どのタイミングでどの手順を踏めば効率よく美味しい料理ができるかを理解しているようなものです。論文執筆においても、ただ文章の書き方を知っているだけでなく、どんな状況でどんな戦略を使えば効果的かを理解していることが重要になります。