はじめに:長年続く教育現場の議論

学生が書いた英作文を添削する際、教師は赤ペンを手に、文法ミス、語彙の誤り、スペルミスなど、あらゆる間違いに印を付けていきます。こうした風景は、世界中の英語教室で見られる日常的な光景でしょう。しかし、この「すべてのエラーを訂正する」という方法は、本当に学生の英語力向上に役立っているのでしょうか。

この疑問に答えようと試みたのが、湖北工業大学の程暁龍氏とオークランド大学のローレンス・ジュン・チャン氏による本研究Sustaining university English as a foreign language learners’ writing performance through provision of comprehensive written corrective feedbackです。論文は2021年に学術誌『Sustainability』に掲載されました。程氏は中国の大学で外国語教育に携わる教員であり、チャン氏は第二言語習得の分野で著名な研究者です。両氏は、中国における大学英語教育の実情をよく理解しており、その知見を活かして、実際の教室で行われている指導法の効果を科学的に検証しようとしました。

この研究が取り組んだのは、英語教育界で長年議論されてきたテーマです。1990年代、ある研究者が「書面による訂正フィードバックは効果がないどころか、有害である」と主張し、教育界に波紋を広げました。それ以来、この主張を支持する人々と反対する人々の間で、激しい論争が続いています。特に議論になっているのが、「すべてのエラーを訂正すべきか、それとも特定のエラータイプに焦点を絞って訂正すべきか」という点です。