複数言語を使えば万事解決、ではない
「英語だけで教えるのはやめて、子どもたちの母語も使いましょう」。近年、こうした考え方が世界中の教育現場で注目を集めています。この考え方の背景にあるのが「トランスランゲージング」という理論です。簡単に言えば、バイリンガルの人たちは頭の中で言語を厳密に分けているのではなく、状況に応じて自由に言語資源を組み合わせてコミュニケーションをとっているという考え方です。
しかし、この一見すばらしいアイデアには、実は大きな落とし穴があるかもしれません。本日紹介する論文”Sustaining critical approaches to translanguaging in education: A contextual framework”は、7人の研究者が共同で執筆したもので、2024年にTESOL Quarterlyという権威ある学術誌に掲載されました。
著者たちは、Anna Mendoza(イリノイ大学)、Laura Hamman-Ortiz(ロードアイランド大学)、Zhongfeng Tian(ラトガース大学)、Shakina Rajendram(トロント大学)、Kevin W. H. Tai(香港大学)、Wing Yee Jenifer Ho(香港理工大学)、Pramod K. Sah(カルガリー大学)という、地理的にも専門的にも多様な背景を持つ研究者たちです。興味深いのは、全員が自身もバイリンガルやマルチリンガルであり、英語だけでなく広東語、フランス語、マレー語、北京語、ネパール語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、タミル語などの言語を話すという点です。彼らは小学校から大学まで、さまざまな教育段階で教師や研究者として働いてきた経験を持っています。
