はじめに―教室に広がる不思議な静けさ
Table of Contents
−- はじめに―教室に広がる不思議な静けさ
- 研究チームの背景―多様な視点が生んだ豊かな分析
- トランスランゲージングとは何か―言語の境界を超える実践
- 「英語だけ」という見えない圧力―オーストラリアの大学が抱える矛盾
- 英語準備コースの影響―禁じられた母語使用の記憶
- 二つの教室の物語―対照的な学生の反応
- Class 1―圧倒的な沈黙と無力感
- Student Aのインタビュー―自信の欠如と自己規制
- Class 2―より積極的だが不均等な参加
- Student CとStudent Dのインタビュー―理解と責任感
- 沈黙の持つ多面的な意味―単なる無参加ではない
- 空間的リソースの活用―言語を超えたコミュニケーション
- 研究の方法論―言語民族誌とCritical Classroom Discourse Analysis
- 論文の提言―三つのレベルでの変革
- ELBコースへの示唆―「英語のみ」からの脱却
- 日本の英語教育への示唆―似ている構造、異なる文脈
- 研究の限界と今後の課題―より広い視野へ
- おわりに―言語の壁を越えて
大学の教室で、先生が「母語を使ってもいいですよ」と言っているのに、学生たちがかたくなに沈黙を守り続ける。そんな光景を目にしたら、皆さんはどう思われるでしょうか。単に内気な性格だから、あるいは英語の勉強のために頑張っているのだろう、と考えるかもしれません。しかし、この沈黙の背後には、もっと複雑で根深い問題が隠れています。
今回ご紹介するのは、オーストラリアのCurtin大学のToni Dobinson、Stephanie Dryden、Sender Dovchin、Qian Gong、Paul Merciecaの5名の研究者による論文です。2024年3月に『TESOL Quarterly』という英語教育の分野では非常に権威ある学術誌に掲載されたこの研究”Translanguaging and “English only” at universities”は、大学の教室という場で、中国人留学生たちがどのように言語を使い、あるいは使わないのかを、丁寧に観察した記録です。
