研究の背景と筆者について

オックスフォード大学教育学部に所属するXuechun HuangとHamish Chalmersは、2023年に興味深い系統的レビュー論文を発表しました。この論文”Implementation and effects of pedagogical translanguaging in EFL classrooms: A systematic review”は、英語を外国語として学ぶ教室(EFL教室)において、「トランスランゲージング」と呼ばれる教育アプローチが実際にどれほど効果的なのかを検証したものです。

トランスランゲージングとは、簡単に言えば、生徒の母語と学習言語(この場合は英語)の両方を教室で積極的に使用する教育方法のことです。従来の英語教育では「英語の授業は英語だけで」という原則が強調されてきましたが、トランスランゲージングの理論では、多言語話者は頭の中で言語を完全に分けているのではなく、一つの統合された言語システムを持っていると考えます。そのため、母語を排除するのではなく、むしろ積極的に活用することで、より効果的な学習ができるはずだというのが基本的な考え方です。

近年、この考え方は多くの教育者から支持を集め、理論的な議論も活発に行われてきました。しかし、Chalmersらが指摘するように、実際にこのアプローチが生徒の英語力を向上させるという確かな証拠があるのかどうかは、これまであまり検証されてきませんでした。理論的には素晴らしく聞こえても、実際の効果を客観的に測定した研究が少ないのです。