はじめに―教室に広がる不思議な静けさ

大学の教室で、先生が「母語を使ってもいいですよ」と言っているのに、学生たちがかたくなに沈黙を守り続ける。そんな光景を目にしたら、皆さんはどう思われるでしょうか。単に内気な性格だから、あるいは英語の勉強のために頑張っているのだろう、と考えるかもしれません。しかし、この沈黙の背後には、もっと複雑で根深い問題が隠れています。

今回ご紹介するのは、オーストラリアのCurtin大学のToni Dobinson、Stephanie Dryden、Sender Dovchin、Qian Gong、Paul Merciecaの5名の研究者による論文です。2024年3月に『TESOL Quarterly』という英語教育の分野では非常に権威ある学術誌に掲載されたこの研究”Translanguaging and “English only” at universities”は、大学の教室という場で、中国人留学生たちがどのように言語を使い、あるいは使わないのかを、丁寧に観察した記録です。