はじめに―ある英語教師の葛藤

教室のドアを開けた瞬間から、教師は英語だけを話さなければならない。学生がアラビア語で質問しても、英語で答えなければならない。たとえ学生が困惑した表情を浮かべていても、母語で説明することは許されない。これは、サウジアラビアのある大学で働く英語教師たちが日々直面している現実です。

興味深いことに、こうした教師たちの多くは、実は学生の母語を授業で使うことの価値を十分に理解しています。それどころか、学生が持つ複数の言語資源を活用することが効果的だと信じています。それなのに、なぜ彼らは実際の教室でそれを実践しないのでしょうか。

サウジアラビアのUniversity of Ha’ilの助教授であるMayez Almayezは、この矛盾に着目し、101名の英語教師を対象とした調査研究を行いました。本論文”Translanguaging at a Saudi University: Discrepancy between English language teachers’ attitudes and self-reported pedagogical practices”は、教師の「考えていること」と「実際にしていること」の間にある大きな隔たりを明らかにし、その背景にある構造的な問題を浮き彫りにしています。