はじめに―コロナ禍がもたらした教育の転換点

2020年3月、サウジアラビアのすべての教育機関が一斉にオンライン授業へと移行しました。この突然の変化は、世界中で起きた教育の大きな転換の一部でしたが、同時に言語教育における興味深い問題を浮き彫りにしました。英語を外国語として学ぶ学生たちが、画面越しに英語の授業を受ける中で、教師たちは母語であるアラビア語をどのように使っているのでしょうか。

本論文”Bilingual teachers’ translanguaging practices and ideologies in online classrooms in Saudi Arabia”の著者たちは、University of BishaのMuhammad AlasmariとFawaz Qasem、Jacksonville State UniversityのRashad Ahmed、そしてKing Saud UniversityのMuhammad Alrayesです。彼らは、サウジアラビアという、英語が公用語ではなく、日常生活ではほとんどアラビア語だけが使われる環境において、大学の英語教育で起きている言語使用の実態を明らかにしようとしました。

この研究が取り上げる「トランスランゲージング」という概念は、1980年代にウェールズで生まれた考え方で、二言語を使える人が、それぞれの言語を厳密に分けるのではなく、柔軟に行き来しながらコミュニケーションを取ることを指します。たとえば、日本の英語の授業でも、先生が難しい文法事項を説明するときに日本語を使ったり、学生同士が英語で話し合う中で日本語を混ぜたりすることがありますが、これもトランスランゲージングの一種と言えるでしょう。