二つの言語を行き来する教室の風景

ノルウェーのNord大学で教育学を専門とするMarina Prilutskayaは、2021年に発表した論文で、過去20年間に蓄積されたトランスランゲージング研究を包括的に検討しています。この論文”Examining pedagogical translanguaging: A systematic review of the literature”は、学術誌『Languages』に掲載されたもので、2011年から2021年2月までに発表された約3000本の文献から、厳格な基準を満たした233本の実証研究を体系的に分析したものです。

トランスランゲージングという言葉に馴染みのない方も多いかもしれません。簡単に言えば、バイリンガルやマルチリンガルの学習者が持っているすべての言語能力を、教室での学びに活かそうという考え方です。たとえば、英語を学ぶ日本人の生徒が、難しい概念を理解するために日本語も使いながら英語を学ぶ、あるいは、スペイン語を母語とする生徒が英語の授業で両方の言語を自由に使いながら思考を深めていく、といった実践を指します。

Prilutskayaがこの研究に取り組んだ背景には、トランスランゲージングに関する研究が急増する一方で、「実際の教室でどのように実践されているのか」という点についての包括的な理解が不足しているという問題意識がありました。理論的な議論は豊富にあるものの、実証的な研究がどの程度蓄積され、どのような知見が得られているのか、全体像を把握する必要があったのです。