論文の背景と著者について

University College London(UCL)の教育研究所に所属するLi Weiは、バイリンガリズムやマルチリンガリズムの研究において世界的に知られる研究者です。中国出身の彼は、自身も複数言語を使用する環境で育ち、イギリスで長年研究を続けてきた経験から、従来の言語研究が持つ問題点を鋭く指摘してきました。この論文”Translanguaging as method”は、2022年に『Research Methods in Applied Linguistics』誌に掲載されたもので、Jerry Leeという研究者の論考に応答する形で書かれています。

この論文が書かれた背景には、トランスランゲージングという概念をめぐる複数の「フラストレーション」があります。Li Wei自身が述べているように、一部の研究者はトランスランゲージングを単なる「言語混合」の記述的なラベルとして捉え、具体的な研究方法が示されていないと不満を抱いています。一方で、トランスランゲージングの理論家たちは、すでにこの概念自体が方法論的視点を提供していると考えているのに、それが理解されないことに苛立ちを感じているのです。