巻き戻せる時代の聞き取り

私たちが日常で英語を聞くとき、たいていは巻き戻せます。動画配信サービスなら十秒戻るボタンがあり、音声教材なら再生位置を自由に動かせます。聞き逃したら、もう一度聞けばよい。それが当たり前になりました。

ところが試験になると話が変わります。音声は一度だけ流れ、聞き逃したら終わりです。この落差は、以前から不自然だと指摘されてきました。実生活の聞き取りと、試験で測る聞き取りが違う。測定の妥当性という点で、無視できない問題です。

そこで持ち上がったのが、自己ペース方式の導入です。受験者が自分で音声を止め、巻き戻せるようにする。実生活に近づけると同時に、処理速度の遅い受験者への配慮にもなる。一石二鳥に見えます。

今回取り上げる研究は、この期待に冷や水を浴びせました。オーストリアの中学生139名を対象に検証したところ、自己ペースは得点をほとんど変えなかったのです。しかも、最も恩恵を受けるはずだった読字に困難を抱える生徒たちにも、効果は見られませんでした。