多様な声を聞かせるという原則
外国語の音を聞き分ける訓練では、多くの話者の声を使うべきだとされてきました。一人の話者の声だけで練習すると、その人の声に慣れるだけで終わってしまう。多様な声に触れることで、話者ごとの違いを無視し、音そのものの特徴に注意を向ける力が育つ。この考え方は、高変動音声訓練という名前で広く知られています。
理屈としては説得力があります。実際の会話では、さまざまな声を聞くことになります。訓練の段階から多様性に触れておけば、実場面への転移も期待できる。研究でも、単一話者より複数話者のほうが有利だという報告が積み上がってきました。
では、話者は何人いればよいのでしょうか。二人でも十分なのか、それとも多いほど良いのか。この実務的な問いに、これまで明確な答えはありませんでした。教材を作る側にとっては、切実な問題です。話者を増やすには、それだけ録音の手間と費用がかかります。
今回取り上げる研究は、この問いに正面から答えました。Charlie Nagle、Shelby Bruun、Germán Zárate-Sández の三氏が Applied Psycholinguistics に発表した “Comparing lower and higher variability multi-talker perceptual training” は、458名という異例の規模で、話者数の効果を検証しています。
