赤ちゃんにできて、大人にできないこと
生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ単語も文法も知りません。それでも、母語の抑揚やリズムを驚くほど早く学び取ります。胎内にいるうちから、母親の声を低い周波数の音として聞いており、生後まもなく母語と外国語を区別できるようになると報告されています。誰かが教えたわけではありません。ただ浴びているだけで、言語の響きが体に染み込んでいきます。
大人が外国語を学ぶとき、この能力は失われてしまったのでしょうか。イントネーションやリズムの習得が難しいことは、教室でも実感されています。何年学んでも、発話全体の抑揚は母語のままという学習者は少なくありません。年齢による能力の低下だ、と説明されがちです。
しかし、別の可能性もあります。大人の学習条件が悪いだけかもしれない、というものです。赤ちゃんは音だけを浴びます。大人は最初から文字を与えられます。教科書、単語帳、板書。音より先に文字が来る。この違いが、習得の差を生んでいるのではないか。
今回取り上げる研究は、この仮説を検証しました。Kateřina Chládková、Václav Jonáš Podlipský、Lucie Jarůšková、Šárka Šimáčková の四氏が Bilingualism: Language and Cognition に発表した “Tuning in to the prosody of a novel language is easier without orthography” は、五分間の接触という短時間の実験で、文字が音の学習を妨げることを示しています。
