「見ていないのに覚えている」という不思議
教室で経験することの中に、うまく説明できない現象があります。生徒がまったく注目していないように見えたのに、後で確かめると覚えている。逆に、真剣に見つめていたのに、翌日には跡形もない。注意と記憶の関係は、思うほど素直ではありません。
今回取り上げる研究は、その不思議を数字で捉えてしまいました。字幕の中の目標表現を黄色く色づけした群と、色づけしなかった群を比べたところ、視線の動きにはほとんど差がなかったのに、テストの成績には明確な差が出たのです。目は同じように動いていた。それでも学習量は違った。
Sungmook Choi 氏が Language Learning & Technology に発表した “Visual saliency in captioned digital videos and learning of English collocations: An eye-tracking study” は、この結果を丁寧に報告しています。都合の悪い部分を隠さずに書いた論文であり、そこが読みどころでもあります。
現場の感覚からすると、この結果はむしろ腑に落ちます。長く見ていることと、深く処理していることは違う。教師なら誰でも知っていることです。それが視線計測という道具で確認された形になります。
