「たくさん聞けば身につく」という信仰
英語の音が聞き取れないと嘆く生徒に、私たちはよくこう言います。たくさん聞きなさい、慣れれば聞こえるようになる、と。この助言には一定の根拠があります。語彙も文法も、大量の入力に触れることで自然に身につく側面があるからです。意識して覚えようとしなくても、繰り返し出会えば記憶に残る。付随的な学習と呼ばれる現象です。
では、音についても同じことが言えるのでしょうか。意図せずとも、聞いているうちに新しい音の区別ができるようになるのか。この問いは、実は十分に検証されていませんでした。語彙や文法については膨大な研究がありますが、音声の付随的な学習を扱った研究は驚くほど少ないのです。
今回取り上げる研究は、この空白に挑みました。Susana Correia、Anabela Rato、Yuxin Ge、João Dinis Fernandes、Magdalena Kachlicka、Kazuya Saito、Patrick Rebuschat の七氏が Studies in Second Language Acquisition に発表した “Effects of phonetic training and cognitive aptitude on the perception and production of non-native speech contrasts” は、130名という大規模な標本で、付随的な音声訓練の効果を検証しています。
結果は、期待を裏切るものでした。訓練を受けた群も受けなかった群も同じように伸びてしまい、訓練の効果を分離できなかったのです。
