「実際の英語は違った」という衝撃

教科書の音声を聞いて練習を重ね、いざ英語圏に行ってみると、まったく聞き取れない。この経験を語る学習者は少なくありません。単語も文法も知っているはずなのに、音として認識できない。

原因の一つは、実際の発話における音の崩れです。日常会話では、語の音が完全な形で発音されることは稀です。母音が曖昧になり、子音が脱落し、語と語の境目が溶け合う。going to が gonna になり、want to が wanna になる。この程度なら知られていますが、崩れはもっと広範に生じています。

教科書の音声は、この崩れを含みません。明瞭に、丁寧に、はっきりと発音されます。学習者が慣れているのは、この整った音声です。実際の発話との落差が、聞き取りの壁を作ります。

今回取り上げる研究は、この崩れが聞き取りにどれだけ影響するかを、二つの異なる母語話者集団で比較しました。Gil Verbeke、Holger Mitterer、Ellen Simon の三氏が Bilingualism: Language and Cognition に発表した “Phonetic reduction in native and non-native English speech: Assessing the intelligibility for L2 listeners” です。