同じ音を聞いても、届くものが違う
授業で英語の音声を流したあと、生徒に問いかけたことがあります。今の文は質問でしたか、それとも普通の文でしたか。半数はすぐに答え、残りの半数は困った顔をしました。同じ教室で、同じスピーカーから流れた同じ音です。それでも、届いているものが違う。この差はどこから来るのか、長いあいだ気になっていました。
語彙力の差だろうと考えるのが普通です。文法の理解度かもしれない。しかし今回取り上げる研究は、まったく別の要因を持ち出してきました。共感性です。他人の気持ちにどれだけ寄り添えるか、という性格特性が、イントネーションの聞き取りに関係しているというのです。
Joseph V. Casillas を筆頭とする研究チームが Applied Psycholinguistics に発表した “Using intonation to disambiguate meaning: The role of empathy and proficiency in L2 perceptual development” は、この意外な仮説を大規模なデータで検証しました。読み終えたとき、教室での経験が別の角度から説明されたように感じました。
