「テストではよい点が取れるのに、いざ話そうとすると口が動かない」―これは中国の英語教育を語る際によく使われる自嘲的な表現ですが、実は日本の英語教育を語る際にも驚くほど頻繁に耳にする言い回しです。この論文は、中国という世界最大の英語学習者人口を抱える国において、実際の職場で英語がどう使われているかを大規模に調査し、そこから逆算して英語教育改革のあり方を提言するという、極めて実践的な視座に立った研究です。

著者とその立ち位置

著者はHe DeyuanとDavid C. S. Liの2名です。掲載誌はRELC Journalで、2023年に54巻1号(149頁から165頁)に掲載されました。原稿自体は2021年に受理されており、DOIは10.1177/00336882211018499です。本文の脚注に示された著者略歴から、Heは中国国内で長年英語教育に関わってきた研究者であり、Liは香港で言語政策や社会言語学を専門とする研究者であることが読み取れます。この二人の組み合わせは象徴的です。中国本土の教育現場を熟知する研究者と、香港という多言語社会で英語の実際の使用実態を研究してきた研究者が手を組むことで、内側からの問題意識と、比較の視座を持った分析力の両方が本論文に備わっています。