「評価」と聞くと、多くの人はテストの点数や通知表の数字を思い浮かべるでしょう。しかし教育学の世界には、点数をつけるための評価とは別に、学びの過程そのものを支えるための評価という考え方があります。それが形成的評価(formative assessment)です。中国のマレーシア・マラヤ大学教育学部に所属するHan Zhang氏、Shigang Ge氏、そしてMohd Rashid Bin Mohd Saad氏による “Formative Assessment in K-12 English as a Foreign Language Education A Systematic Review” は、この形成的評価がEFL(外国語としての英語)を学ぶ子どもたちの教室でどのように機能しているかを、2019年から2023年にかけて発表された40本の論文を精査することでまとめ上げた、いわば「研究の研究」です。2024年にHeliyon誌に掲載されました。
この論文の第一著者であるZhang氏は、教育評価とEFL教育を専門とする研究者で、共著者のMohd Saad氏はマラヤ大学教育学部に長く籍を置く教育学の専門家です。マレーシアという多言語社会に身を置きながら、世界各地のEFL教育における評価実践を俯瞰しようとする視点は、この論文全体の構成にも表れています。
なぜ今、形成的評価のレビューが必要だったのか
形成的評価という概念自体は、Bennett(2011)らによって「学習のための評価(assessment for learning)」として整理され、教育学の分野では既に一定の蓄積があります。従来の総括的評価(summative assessment)が、学習期間の終わりに一度だけ成果を測るのに対し、形成的評価は学習の過程の中で継続的なフィードバックを提供し、教師がリアルタイムで指導方法を調整することを可能にするものだとされています。
この論文が興味深いのは、先行するシステマティックレビュー(Febriani and Irsyad Abdullah、Hartmeyer et al.、Lee et al.、Schildkampら)がいずれも2006年から2019年までの文献を扱っていたのに対し、本研究がその「続き」として2019年1月から2023年10月までの文献に焦点を絞った点です。しかも先行レビューの多くは、ブレンド型学習環境やコンセプトマップに基づく評価など特定のテーマに限定されていたのに対し、本研究は教師と生徒双方の信念や認識、そして実践の効果、実施上の課題という三つの軸を横断的に扱う点で射程が異なります。研究の「隙間」を丁寧に見極めたうえで着手されたレビューだと言えるでしょう。
