英語の授業で「Duolingoを使っています」という生徒に出会ったことのある先生は、もう相当な数に上るのではないでしょうか。緑色のフクロウのキャラクターとストリーク(連続学習日数)の表示、そして毎日のようにスマートフォンから届く通知。3億人以上が利用するというこのアプリは、もはや語学学習アプリの代名詞のような存在になっています。しかし、このアプリが本当に語学力を伸ばすのかという問いに、学術的に胸を張って「はい」と答えられるだけの証拠が揃っているのか―この論文は、その問いに真正面から挑んだシステマティックレビューです。

著者と研究の背景

著者はMitchell Shortt、Shantanu Tilak、Irina Kuznetcova、Bethany Martens、Babatunde Akinkuolieの5名で、いずれもOhio State Universityに所属する研究者です。学習工学や教育心理学、外国語教育、デジタル学習研究といった異なる専門領域の研究者がチームを組んでいる点が特徴的で、それぞれの専門性が本論文のコーディング作業―後述する体系的な文献分類作業―に活かされています。掲載誌はComputer Assisted Language Learning誌で、2023年に36巻3号(517頁から554頁)に掲載されました。DOIは10.1080/09588221.2021.1933540です。

この研究が行われた背景には、モバイル支援言語学習(MALL)という分野そのものの急成長があります。スマートフォンの普及とともに、語学学習アプリは爆発的に増えましたが、その効果を検証する研究の質はアプリの数に追いついていませんでした。先行研究としては、Shadievら(2020)が真正な環境での学習を対象にしたレビューを行い、Kukulska-HulmeとViberg(2018)が協働学習の観点からMALLをまとめています。ただし、Duolingo一つに焦点を絞った体系的なレビューはこれまで存在しませんでした。著者らは、Duolingoが「ゲーミフィケーション」―ゲームの要素を学習活動に取り入れる手法―を最も強く体現するMALLアプリの一つであるという先行研究の指摘(Govender and Arnedo-Moreno, 2020)を踏まえ、Duolingoを事例として取り上げることで、ゲーミフィケーションを取り入れた語学学習研究全体の傾向を照らし出そうとしました。