英語を話すとき、文法の正確さや発音のきれいさだけが問われているわけではないと、多くの英語教員は経験的に感じているのではないでしょうか。緊張して頭が真っ白になる生徒もいれば、間違いを恐れずのびのびと話す生徒もいます。同じ文法知識を持っていても、話す姿はまったく違う。この違いはどこから来るのか。今回取り上げるWang, Rezaei, and Izadpanahの論文は、この直感的な疑問に、心理学的な変数を用いて実証的に迫ろうとする研究です。

この論文は”Speaking accuracy and fluency among EFL learners: The role of creative thinking, emotional intelligence, and academic enthusiasm”というタイトルで、2024年に Heliyon 誌に掲載されました。著者はWenli Wang氏(中国・甘粛政法大学外国語学部)、Yasaman Mohammad Rezaei氏、そしてSiros Izadpanah氏(いずれもイラン・イスラム自由大学ザンジャン校英語教育学科)です。イランの英語教育研究者と中国の研究者が国際共同研究として取り組んだ点も、この論文の特徴のひとつです。

なぜ心理学的な変数に注目したのか

論文の冒頭で著者たちは、グローバル化が進む世界において、英語で流暢かつ正確に話す能力がいかに重要視されているかを述べたうえで、近年の第二言語習得研究において、単なる言語知識だけでなく、創造的思考(Creative Thinking, CT)、感情知能(Emotional Intelligence, EI)、学業的熱意(Academic Enthusiasm, AE)といった心理学的な構成概念が、学習成果に大きな影響を与えることが明らかになりつつあると説明しています。

この背景には、いわゆる「ポジティブ心理学」を第二言語教育に応用しようとする近年の潮流があります。著者たちは、これらの心理的要因がそれぞれ個別に研究されてきた例はあるものの、これら三つの要因とスピーキングの正確性・流暢性との関係を包括的に検討した研究はほとんど存在しないという研究上の空白を指摘し、この点を埋めることを本研究の目的としています。特に、創造的思考が問題解決能力や言語的独創性を高めることでスピーキング能力に寄与し、感情知能が自己の感情制御を通じてより明瞭で流暢な発話を可能にし、学業的熱意がより高い意欲と関与を通じて言語実践と能力の向上につながるという三つの仮説的経路を軸に、研究デザインが組み立てられています。