研究の背景と問いの射程
ChatGPTが世界的な話題になったのは2022年末のことですが、それ以来「AI を授業に取り入れるべきか」という問いは、日本を含む多くの国の英語教育現場で繰り返し議論されてきました。しかし議論の多くは印象論にとどまり、「使えそうだ」「危険そうだ」という感覚的な評価が先行しがちです。そういう状況のなかで、実証データと学習者の生の声の両方を組み合わせた研究が登場すると、現場の教員としてはやはり目が止まります。
本稿で取り上げるのは、中国・瀋陽の刑事警察大学(Criminal Investigation Police University of China)に所属するYue Zhaiと、イランのアッラーメ・タバータバーイー大学(Allameh Tabataba’i University)のBehzad Nezakatgooが共著した論文 “Evaluating AI-Powered Applications for Enhancing Undergraduate Students’ Metacognitive Strategies, Self-Determined Motivation, and Social Learning in English Language Education”(2025年、Scientific Reports掲載)です。310名の中国人大学生を対象に、ChatGPT・Poe・Google Bardといった生成AIツールを英語アカデミック目的(EAP)の授業に組み込んだ場合、学習者のメタ認知方略・社会的方略・自己決定的動機づけにどのような変化が生じるかを、量的・質的の両面から検証しています。
著者のZhaiは中国の法執行系大学において基礎課程教育を担当する実務家研究者であり、Nezakatgooは第二言語習得と動機づけ研究を専門とする応用言語学者です。異なる文化圏の研究者が組んだという点も、研究の視野の広さに一役買っています。
