研究の背景と概要
「自律学習」という言葉を聞いて、日本の英語教育関係者はどんな場面を思い浮かべるでしょうか。生徒が自分でテキストを選んで黙々と勉強する姿、あるいは教師の指示なしに課題を完遂してしまう優秀な学生の姿を思い描く方も多いかもしれません。しかし本論文が問いかけるのは、そうした表面的なイメージをはるかに超えた、学習者オートノミーの多次元的な実態です。
本論文の著者は、タイのアサンプション大学(Assumption University)大学院の英語教授法(ELT)プログラムに所属するRosukhon Swatevacharkul と、同大学のビジネス英語学科に所属するNida Boonmaです。Swatevacharkulは同プログラムで実際に学生を教えており、研究者であると同時に現場の教師でもあります。その立場からこそ生まれた問題意識が、この研究の出発点にあります。将来の英語教師を育てるプログラムにおいて、学生たちはどの程度自律的に学んでいるのか。そしてその自律性はどのような要因によって支えられているのか。これが本研究の核心的な問いです。
研究の対象は、MA ELTプログラムの一年次に在籍する19名の学生です。内訳は中国人15名、ミャンマー人3名、タイ人1名という構成で、英語が母語ではないアジア人学習者ばかりです。年齢は21歳から40歳と幅広く、教職経験を持つ者もいれば、全くの未経験者もいます。研究方法としては、量的調査と質的調査を組み合わせた「説明的混合研究デザイン(explanatory mixed-methods design)」が採用されました。まず Murase(2015)が開発した「言語学習者オートノミー測定ツール(MILLA)」を用いたアンケート調査を実施し、その後、5名の学生を対象とした半構造化インタビューによって、量的データの解釈を深めていくという手順です。
