研究の背景と概要
小学校の教室で、先生が「この記号、どの文字に似てると思う?」と子どもたちに問いかける場面を思い浮かべてほしいです。それとも「この記号はAです、覚えなさい」と指示する場面でしょうか。一見どちらも同じ「教える」行為ですが、子どもたちの学び方や自分自身の理解度を把握する力、いわゆるメタ認知に与える影響は、実は大きく異なるかもしれません。今回取り上げる論文は、まさにそのような問いに真剣に向き合った研究です。
van Loonら(2021)による “Connecting teachers’ classroom instructions with children’s metacognition and learning in elementary school” は、スイスの小学校2年生および4年生を対象に、21名の教師と308名の児童が参加した観察研究です。van Loonはスイス・ベルン大学発達心理学部に所属する研究者で、子どもの記憶やメタ認知の発達を長年専門的に研究してきた人物です。本研究は、教師の授業中の発話を録音・コーディングし、その内容と子どもの記憶成績、再学習選択の適切さ、そして自己モニタリング精度との関係を分析するという、きわめて精緻な設計を持っています。
教師の指導を「認知的方略の指導」と「メタ認知的方略の指導」に分類したうえで、さらに「教師主導型(teacher-directed)」と「子ども中心型(child-centered)」という指導スタイルの軸を加えて分析している点が、この研究の大きな特徴です。
