はじめに―なぜ今、この論文が重要なのか

語学教育の現場にいる方なら、こんな経験はないでしょうか。オンライン授業を始めてみたら、課題の提出率が激減した。学生が画面の前にいるはずなのに、どこかよそにいるような気がする。質問してくれれば助けられるのに、そもそも質問が来ない。これは英語教師だけの悩みではありませんが、オンライン学習に移行した途端に顕在化するこの「学習者の自律性の問題」は、英語教育においても切実なテーマです。

本稿で紹介するのは、Edisherashvili, Saks, Pedaste, Leijenの4名による論文 “Supporting Self-Regulated Learning in Distance Learning Contexts at Higher Education Level: Systematic Literature Review”(Frontiers in Psychology, 2022)です。エストニア・タルトゥ大学の教育学研究所に属するこのチームは、自己調整学習(SRL: Self-Regulated Learning)を遠隔教育の文脈でどう支援するかという問いに対して、2010年から2020年の間に発表された実証研究38本を体系的に精査しました。コロナ禍が世界の教育をオンラインへと強制的に押し流した直後に発表されたこの論文は、現場の感覚と研究知見をつなぐ橋として読むことができます。