はじめに―「自律した学習者を育てよ」という無理難題
「学習者を自律させなさい」と言われても、では実際にどうすればいいのか。日本の英語教育の現場でもこの問いは長年くすぶり続けています。文部科学省が「主体的・対話的で深い学び」を掲げ、英語教育においても学習者が自分の学びをコントロールすることへの期待は高まる一方です。ところが、そもそも「自律」ができているかどうかをどうやって確かめるのか、という問いに対しては、現場では驚くほど手つかずのままであることが多い。そういった問題意識から生まれた論文が、今回紹介するElke Ruelensの“Measuring Language Learner Autonomy in Higher Education: The Self-Efficacy Questionnaire of Language Learning Strategies”(2019年)です。
Ruelensはベルギーのアントワープ大学の言語学部に所属する研究者で、この論文は同大学の英語専攻の学生を対象とした博士研究の一部として位置づけられています。彼女の問題意識は明快です。学習者の自律を支援したいなら、まずそれを「見える化」する必要がある。しかし既存のツールはいずれも研究目的に特化しており、教員が日常的に使えるものではない。だからこそ、実際の授業現場で使いやすく、かつ信頼性のある測定ツールを作ろうというわけです。
