研究の概要と背景―「自律性」という問いに正面から向き合う
外国語教育において「学習者の自律性」という概念が大切だと言われるようになって久しいです。しかし、「大切だとはわかっているが、実際にどうすれば育てられるのか」という問いに、実証的な答えを出した研究はそれほど多くありません。教壇に立つ教師であれば、この問いがいかに切実かをよくご存知のことと思います。学習者が受け身で、教師の指示を待ち、自分から動こうとしない―そんな場面に日々直面している方も多いのではないでしょうか。
今回取り上げる論文は、そのような問いに対して真正面から向き合った意欲的な研究です。サウジアラビアのキング・ハーリド大学英語学部に所属するFakieh Alrabaiによるこの論文は、Frontiers in Psychology誌の2021年9月号に掲載されました。タイトルは “The Influence of Autonomy-Supportive Teaching on EFL Students’ Classroom Autonomy: An Experimental Intervention” です。AlrabaiはサウジアラビアにおけるEFL(外国語としての英語)学習者の動機づけ、不安、自律性をめぐる一連の研究を積み重ねてきた研究者であり、本論文はその集大成とも言える位置づけにあります。
研究の舞台はサウジアラビアです。日本の英語教育関係者には少しなじみのない文脈かもしれませんが、実はこの国の教育状況は日本と非常に似通っています。教師中心の授業が主流で、学習者は受け身になりがちで、自律的な学習者を育てることの難しさが現場で広く認識されている―この構図は日本と重なります。だからこそ、この研究の知見は日本の英語教育にとっても示唆に富むものです。
