論文が問いかける根本的な問題
日本の英語教育の現場で「学習者の自律性を伸ばしたい」と考えたことのある先生は少なくないはずです。けれども、実際に授業でそれを実現しようとしたとき、「自律性とは何か」「どこから手をつければよいのか」という問いの前で立ち止まってしまった経験を持つ方も多いのではないでしょうか。自律性という概念は、まるで「健康」や「幸福」のように、誰もがその重要性に同意しながら、いざ定義しようとすると途端に輪郭がぼやけてしまう類の言葉です。
Sara KharroubiとAbdeljabbar El Mediouni(モロッコ、Mohamed I大学)による本論文 “Conceptual Review: Cultivating Learner Autonomy Through Self-Directed Learning & Self-Regulated Learning: A Socio-Constructivist Exploration” は、まさにその問いに正面から向き合った野心的な理論的考察です。2024年に International Journal of Language and Literary Studies の第6巻第2号に掲載されたこの論文は、学習者オートノミー(LA)を単なる教育目標としてではなく、Self-Directed Learning(SDL、自己主導学習)とSelf-Regulated Learning(SRL、自己調整学習)という二つの概念と有機的に結びつけた統合的フレームワークとして提示しています。筆者のKharroubiは博士課程在籍中の研究者であり、コミュニケーション・教育・デジタル活用・創造性に関する研究室に所属しています。指導教員格にあたるEl Mediouni教授は同大学の人文学部で副学部長を務めるベテランの研究者です。この師弟による共同執筆という構図もあってか、論文は理論的な精緻さと教育実践への配慮のバランスがよく取れています。
