論文との出会い―「学び方を教える」という視点
教師として長く英語の授業を続けていると、ある共通の悩みにぶつかることがあります。それは、どれだけ丁寧に文法を説明しても、どれだけ豊富な語彙リストを渡しても、授業が終わった瞬間に学習が止まってしまう学生が少なくないという現実です。「教えたはずなのに、なぜ定着しないのか」―そんな問いを抱えた英語教育関係者にとって、今回取り上げる論文は、かなり根本的なところから問い直しを迫る内容です。
Isabela-Anda DragomirとBrândușa-Oana Niculescuによる論文 “Mastering Autonomy: The Power of Self-Regulated Learning in Higher Education” は、2024年にルーマニアのシビウに位置する「ニコラエ・バルチェスク」陸軍士官学校に所属する両著者によって、International Conference KNOWLEDGE-BASED ORGANIZATION(Vol. XXX, No. 2)に発表されました。軍の士官学校という、一見すると自由な学びとは縁遠い環境に身を置く研究者たちが、学習者の自律性を論じているという点が、まず一つの興味深い逆説といえます。規律と自律は対立概念ではなく、むしろ高度な規律は深い自律から生まれるのだという認識が、著者たちの問題意識の根底にあるのかもしれません。
論文の主題は、高等教育における自己調整学習(Self-Regulated Learning、以下SRL)です。SRLとは、学習者が自分自身の認知・感情・行動を意識的にコントロールしながら、学習目標の達成に向けて主体的に取り組むプロセスを指します。論文はこのSRLの構成要素を整理し、高等教育における重要性を論じたうえで、教育者や機関が実践できる具体的な方策を提示しています。
