なぜいま、この論文を取り上げたか
2022年11月にChatGPTが公開されてから、英語教育の世界はまるで大きな石を池に投げ込んだような状態になりました。波紋は次々と広がり、授業での活用法を探る教員、禁止か許可かで揺れる大学の委員会、戸惑いながらも使い続ける学生、そしてそれを追いかけるように増え続ける研究論文。誰もが手探りで動いている中で、「この2年間、研究者たちは実際に何を明らかにしてきたのか」を冷静に整理した論文が現れました。
Purdue大学のBelle Liらによる “Two years of innovation: A systematic review of empirical generative AI research in language learning and teaching”(Computers and Education: Artificial Intelligence, 2025)がそれです。本論文は、2023年から2024年にかけて発表された144本の査読付き実証研究を体系的に分析したシステマティック・レビューです。著者のLiは、生成AIと言語教育の交差点を精力的に研究してきた研究者で、2024年にはChatGPT登場から最初の1年間の研究を整理した論文(Li et al., 2024b)もすでに発表しており、本論文はその続編として第二年次を加えた比較分析の性格を持っています。共著者のChaoran WangはColby Collegeのライティング部門に所属しており、本論文が特にライティング教育との接点を重視している点は、そのような研究チームの構成とも無関係ではないでしょう。
本稿では、この大規模レビューを特集テーマ「生成AIと共創するアカデミック・ライティング―英語教育における実践、評価、そして倫理」に引き寄せながら、日本の英語教育現場にとって何が重要なのかを丁寧に読み解いていきます。
