はじめに―「使ってはいけない」から「どう使うか」へ

2022年11月にChatGPTが公開されたとき、世界中の教育機関はある種のパニックに陥りました。香港大学がいち早く使用禁止を宣言し、日本でも多くの大学が「AIで書いたレポートは認めない」という方針を打ち出しました。教壇に立つ教員の多くが「これで学生はもう自分で書かなくなる」と頭を抱えた、あの騒然とした空気を覚えている方も多いのではないでしょうか。しかし、それから約2年が経過した今、議論の中心は「禁止するか否か」から「いかに教育的に統合するか」へと着実に移行しています。

本稿で取り上げるのは、Mark Feng Tengによる論文 “A Systematic Review of ChatGPT for English as a Foreign Language Writing: Opportunities, Challenges, and Recommendations”(International Journal of TESOL Studies, Vol. 6(3), 2024)です。Tengはマカオ理工大学准教授であり、コンピュータ支援による第二言語語彙習得およびL2ライティングを専門とする研究者です。2017年に香港応用言語学会(HAAL)のベストペーパー賞を、2023年には中国教育部の社会科学分野ベストペーパー賞を受賞しており、この分野における実績は申し分ありません。加えて彼自身がレビュー対象論文の一本(Teng, 2024)の著者でもあるという点は、研究者の立場から言えばやや珍しい構成ですが、その透明性は論文内できちんと示されています。

本論文の目的は、EFL(外国語としての英語)ライティングにおけるChatGPTの役割を、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従ったシステマティック・レビューによって包括的に整理することです。343本の文献から出発し、最終的に2023〜2024年に発表された20本の実証研究を精選して分析しています。特集テーマである「生成AIと共創するアカデミック・ライティング―英語教育における実践、評価、そして倫理」を意識しながら、この論文が私たちに何を語りかけているかを丁寧に読み解いていきたいと思います。