論文を読む前に―「赤ペン」の重さ
英語の作文を教えた経験のある方なら、誰でも一度は感じたことがあるはずです。30人分の英作文を前にして、赤ペンを握りながら「この週末はまたつぶれた」と苦笑いする、あの感覚です。一人ひとりの文章に向き合い、語彙の選択を指摘し、論理の流れにコメントし、段落構成に注文をつける。それ自体は教育的に意義深い作業ですが、物理的・精神的なコストは決して小さくありません。そこへ「AIが代わりにフィードバックを出してくれる」という話が聞こえてくれば、飛びつきたくなる気持ちは自然でしょう。
しかし、AIに全部任せてしまえばいいのか、教師は何をすればいいのか、そしてそもそも両者を組み合わせる場合、どういう順番で使えばいいのか―こうした問いに正面から答えようとした研究が、2025年2月にEducation Sciences誌に掲載されました。Thi Thanh Thao Tranによる “Enhancing EFL Writing Revision Practices: The Impact of AI- and Teacher-Generated Feedback and Their Sequences” です。ベトナムの大学で行われた実証研究ですが、その問いの立て方と知見は、日本の英語教育の現場にも深く刺さるものがあります。
