大学の授業でChatGPTを使って英語のエッセイを書かせてみたら、ある学生は驚くほど洗練された文章を仕上げてきた一方で、別の学生はAIをほとんど使わないまま、あるいはただコピーペーストするだけで終わってしまった―そういう経験をお持ちの先生は、日本でも少なくないのではないでしょうか。「AIを使いなさい」と言うだけでは何も解決しない。ではいったい、何が違いを生み出すのか。今回紹介するKim, J., Lee, S. S., Detrick, R., Wang, J., & Li, N.による論文”Students-Generative AI Interaction Patterns and Its Impact on Academic Writing”(Journal of Computing in Higher Education, 2026年, 38巻, pp. 504–525)は、まさにその問いに正面から向き合った研究です。
研究の背景と著者たちについて
筆頭著者のJinhee Kimは、アメリカのOld Dominion大学でInstructional Design and Technologyの助教を務める研究者で、AI in EducationとHuman-AI Interactionを専門としています。共著者のNa Liは中国の西安交通リバプール大学でデジタル教育プログラムの責任者を務めており、この研究は両機関の資金支援を受けて実施されました。研究の舞台となったのは、英国との合弁という形で運営される中国・蘇州の国際大学です。そこではすべての授業が英語で行われており、入学前にTOEFLやIELTSで一定のスコアを求められる学生たちが、英語でのアカデミック・ライティングに日々取り組んでいます。いわば、日本でいうところの「英語で専門科目を学ぶEMI(English as a Medium of Instruction)環境」の研究です。
この研究が生まれた背景には、急速に普及するGenAI(生成AI)ツールの教育利用に関する楽観論への静かな疑問があります。確かに、AIは英語ライティングの様々な局面を支援してくれます。Malik et al.(2023)が指摘するように、GenAIは文法・語彙・構成についての自動フィードバックを提供し、Nguyen et al.(2024)はAIとの対話的なやりとりを通じて学習者の認知的負荷が軽減されることを報告しています。しかし著者たちが着目したのは、「AIを使えば誰でも恩恵を受けられるわけではない」という現実です。ちょうど、調理器具を揃えただけでは料理が上手くなるわけではないのと同じで、道具の使い方を知っているかどうかが決定的に重要だということです。
