本稿で取り上げるのは、Leah Gustilo、Ethel Ong、Minie Rose Lapinidの三名によって2024年にInternational Journal for Educational Integrityに発表された論文 “Algorithmically-driven writing and academic integrity: exploring educators’ practices, perceptions, and policies in AI era” である。フィリピンのDe La Salle Universityに所属する三名は、それぞれ英語・応用言語学、コンピュータサイエンス、理科教育という異なる専門を持ち、その学際的な視点がこの研究に独特の厚みをもたらしている。
この論文が問いかけていること
「先生、これってAIで書きましたか?」という問いが、今や世界中の教室で飛び交っている。あるいは逆に、学生から「先生、AIを使っていいですか?」と聞かれて言葉に詰まった経験を持つ方も少なくないだろう。本論文は、まさにそうした現場の困惑に正面から向き合った実証研究です。
研究の目的は明快で、教育者たちがアルゴリズム駆動型ライティングツール―論文中ではADWTs(Algorithmically-Driven Writing Tools)と総称される―についてどのように感じ、実際にどう使い、そしてどのような政策が必要だと考えているかを探ることです。ここでいうADWTsとは、ChatGPTのような大規模言語モデルにとどまらず、Grammarly(文章校正ツール)、Google Translate(機械翻訳)、Quillbot(自動言い換えツール)の計四カテゴリーを包括しています。
この枠組みの設定は実に巧妙です。ChatGPTだけに注目しがちな昨今の議論に対して、Grammarly や Google Translate といった「すでに教室に当たり前のように存在しているツール」をひとつの連続体として位置づけることで、AIをめぐる倫理的問題が今に始まった話ではないことを示しています。著者たちはこれを「ADWTsの系譜」として丁寧に描き出しており、スペルチェッカーから始まった道具の進化が、いかにして現在の生成AIに至ったかを概観しています。
