はじめに―問いの立て方が正直だった

研究論文を読んでいると、「この研究、誰のために書かれたのだろう」と首をかしげることがある。大学教員が自分たちの不安を確認するための調査、あるいは大学当局が既定路線の政策に「学術的裏付け」を与えるための調査。そういった類いのものが、AI時代の学術的誠実性(academic integrity)をめぐる議論のまわりには少なくない。

その点で、この論文”Student perspectives on the use of generative artificial intelligence technologies in higher education”は出発点からして誠実だった。イギリスのリバプール大学図書館チームが、ChatGPTをはじめとする生成AI(Generative Artificial Intelligence、以下GAI)の急速な普及を受けて大学の学術的誠実性ポリシーを改訂しなければならなくなった。そのとき彼らが最初にしたことは、教員会議を開くことでも、外部コンサルタントを呼ぶことでも、他大学の事例を参照することでもなく、学生に聞くことだった。「自分たちが影響を受ける当事者に、まず声を聞かせてほしい」という姿勢は、政策立案においてはしばしば言われながらなかなか実現しない理念であり、この研究はそれを実際に行動に移した。