序論:なぜ研究の全体像を把握することが重要なのか
研究者の世界を森に例えるならば、個々の研究は一本一本の木のようなものです。しかし、木ばかりを見ていては森全体の姿は見えません。特に人工知能(AI)と教育という二つの分野が交差するAI教育(AIED)研究においては、技術の急速な発展とともに研究の多様化が進み、全体像を把握することがますます困難になっています。
香港大学のShihui FengとNancy Lawによる論文”Mapping artificial intelligence in education research: A network-based keyword analysis”は、まさにそのような状況下で、2010年から2019年までの10年間にわたるAI教育研究の「森」を鳥瞰図のように描き出した重要な研究です。彼らは1830本の研究論文を対象に、キーワード共起ネットワーク(KCN)という手法を用いて、研究分野の知識構造、知識クラスター、そしてトレンドとなるキーワードを三段階のアプローチで分析しました。
この研究の価値は、単に数字や統計を示すだけでなく、AI教育研究という学問分野がどのように形成され、発展してきたのかを客観的なデータに基づいて明らかにしたことにあります。研究者にとっては自分の研究がより大きな文脈の中でどのような位置づけにあるのかを理解する手がかりとなり、教育現場の実践者にとってはAI技術の教育への応用がどのような方向に向かっているのかを知る指標となります。
