はじめに―「使っている」の先にあるもの

英語の授業でレポートを課したとき、「これはAIが書いたのではないか」と感じたことのある教員は、今や少なくないでしょう。文体が均質で、論の展開が妙に流暢で、でもどこか「薄い」。そういう原稿を前にして、採点ペンを止めてしまった経験は、日本の大学や高校の英語教員にも急速に広がっています。しかし問題は、「使ったかどうか」だけではありません。「どのように使ったか」「何のために使ったか」「使うことで何を得て、何を失ったか」―こうした問いに答えるための実証的なデータが、まだ圧倒的に不足しているのが現状です。

今回紹介するのは、その問いに正面から向き合った研究です。Xin Zhao、Andrew Cox、Liang Caiによる “ChatGPT and the Digitisation of Writing”(Humanities and Social Sciences Communications、2024年)は、英国の大学院生23名を対象に、ChatGPTをはじめとするデジタルツールが学術ライティングの実践にどう組み込まれているかを、インタビューと観察という定性的手法で詳細に記録した研究です。本誌特集「生成AIと共創するアカデミック・ライティング」のテーマと深く響き合う内容であり、日本の英語教育関係者にとっても示唆に富む一篇です。