はじめに―採点されることへの恐怖から解放されるとしたら
英語の授業でライティング課題を出すたびに、学習者がなかなか書き始めないという経験をお持ちの先生方は少なくないと思います。白紙のページを前に固まってしまう学生、提出後に教師のコメントを怖々と見る学生―その根っこにあるのは、「間違えることへの恐れ」であることが多いのではないでしょうか。筆者が初めてChatGPTを自分の文章に使ってみたとき、真っ先に気づいたのは、その指摘がどこか淡々としていて、妙に気持ちが楽だということでした。怒られているわけでもなく、褒められているわけでもなく、ただ具体的に「ここはこう直せる」と示してくれる。その感覚は、意外と新鮮なものでした。
本稿で取り上げるのは、Mohammed and Khalid(2025)による論文 “Under the World of AI-Generated Feedback on Writing: Mirroring Motivation, Foreign Language Peace of Mind, Trait Emotional Intelligence, and Writing Development” です。Language Testing in Asia 誌(第15号)に掲載されたこの研究は、AIが生成するフィードバックがEFL学習者(英語を外国語として学ぶ学習者)のライティング能力だけでなく、動機付け、情動的知性(Emotional Intelligence、以下EI)、そして「外国語学習における心の平和(Foreign Language Peace of Mind、以下FLPoM)」という比較的新しい概念にどのような影響を与えるかを、量的・質的の両面から検討したものです。
特集テーマである「生成AIと共創するアカデミック・ライティング」に正面から向き合うこの論文は、実践と評価という二つの軸において非常に示唆的です。ただし読み進めていくと、いくつかの方法論的な疑問も浮かび上がってきます。それも含めて、丁寧に見ていきましょう。
