はじめに―「使っていいですか?」から「どう使うか」へ

2022年末にChatGPTが一般公開されて以来、世界中の教育現場で繰り返されてきた問いがあります。「学生がAIを使って課題を書いたら、それは不正なのか」というものです。日本の大学でも2023年度以降、各校が個別のガイドラインを策定し、「禁止」から「条件付き許可」まで対応はまちまちでした。現場の教員としては、正直なところ「どうしたものか」と頭を抱えた方も少なくなかったのではないでしょうか。

筆者もかつて、学生から「レポートにChatGPTを使っていいですか」と聞かれ、咄嗟に答えられなかった経験があります。禁止すれば陰で使われるだけかもしれないし、自由にすれば本人の学びが失われるかもしれない。そのジレンマは、今も多くの教育者が抱えているものだと思います。

今回取り上げる論文は、そのジレンマに対して「禁止か許可か」という二項対立ではなく、「どのように使わせ、どのように学ばせるか」という問いに正面から答えようとした実証研究です。香港教育大学(The Education University of Hong Kong)に所属するLixun WangとBoyuan Renによる “Enhancing Academic Writing in a Linguistics Course with Generative AI: An Empirical Study in a Higher Education Institution in Hong Kong”(2024年、Education Sciences掲載)は、生成AIを学術ライティングに組み込んだ13週間の授業実践を詳細に報告しており、今まさに議論が盛んなこの分野における数少ない実証的な研究のひとつです。