はじめに―ChatGPTが当たり前になった教室で何が起きているか

英語の授業でエッセイを書かせると、以前とは明らかに違う提出物が増えた、という声を日本の英語教育関係者からよく耳にするようになりました。文章が妙に流暢で、語彙が豊富で、しかしどこか「その学生らしくない」。ChatGPTをはじめとする生成AI(Generative AI、以下GAI)ツールの普及は、アカデミック・ライティングの現場に静かな、しかし根本的な変化をもたらしています。使い方を教えるべきか禁止すべきか。評価基準をどう見直すか。不正利用をどう防ぐか。現場の教員は日々、答えの出ない問いと向き合っています。

そのような状況の中で、「そもそも、GAIを使いながら学ぶ学生の書く力はどのような要因で決まるのか」「GAIを使うことで学生の心理的な状態はどう変わるのか」という、より根本的な問いに取り組んだ論文が2025年5月に発表されました。山東大学(Shandong University)のJiajia ShiとWeitong Liu、および福建師範大学(Fujian Normal University)のKe Huによる “Exploring How AI Literacy and Self-Regulated Learning Relate to Student Writing Performance and Well-Being in Generative AI-Supported Higher Education”(『Behavioral Sciences』15巻5号、2025年)です。本稿では、この論文が何を明らかにし、何を問いかけているかを丁寧に読み解きながら、日本の英語教育という文脈からその意義と課題を考えてみたいと思います。