英語教育の現場で「AIを使って作文させてもいいのか」という問いが、ここ数年で急速に現実味を帯びてきました。筆者自身も、研究仲間との会話の中で「学生がChatGPTで書いてきたレポートをどう扱えばいいか」という話題が何度も出たことを思い出します。この問いはもはや理論的な議論ではなく、月曜日の朝、教室に入る前に頭を抱える、極めて実務的な悩みになっています。そんな状況の中で、今回取り上げる論文は、生成AI支援ライティングの効果と限界を、実際の学習者の文章を丁寧に比較しながら論じた、注目すべき研究です。

論文と筆者たちについて

今回解説するのは、Rahmi, R., Amalina, Z., Andriansyah, & Rodgers, A.(2024)による”Does It Really Help? Exploring the Impact of AI-Generated Writing Assistant on the Students’ English Writing”(Studies in English Language and Education, 11(2), 998-1012)です。

第一著者のRegina Rahmiは、インドネシアのバンダアチェにあるUniversitas Bina Bangsa Getsempenaの英語教育学科に所属する研究者で、EFL(外国語としての英語)学習者の書く力の発達に継続的な関心を持っています。共著者のZahria Amalinaも同大学に所属し、第三著者のAndriansyahはUniversitas Islam Negeri Ar-Raniry(同じくバンダアチェ)の研究者です。第四著者のAdrian RodgersはThe Ohio State Universityで教育学の博士号を取得した研究者で、このチームはインドネシアとアメリカをまたぐ国際的な協力体制のもとで研究を進めています。

インドネシアは、EFLとしての英語教育という文脈において日本と多くの共通点を持ちます。英語が日常生活の共通語ではなく、学校教育の中でのみ主に触れる言語であること、また学習者が第一言語(インドネシア語や各地方語)と英語の間で認知的な負荷を抱えながら書くことを求められること―こうした背景は、日本の英語教室の風景と驚くほど重なります。本研究の知見が、地理的にも状況的にも近いところにある日本の英語教育関係者にとって参照しやすいのは、まさにこの文脈的な類似性ゆえです。