生成AIが教育現場に急速に浸透しつつある今、多くの英語教員が共通の問いを抱えているのではないでしょうか。「ChatGPTを授業に使っていいのか、使うとすればどう使えばいいのか」という問いです。筆者自身も、初めてChatGPTに英文を添削させてみたとき、その流暢な出力に驚くと同時に、「これは学習者の思考を助けるのか、それとも奪うのか」という不安を拭えなかった記憶があります。本稿で取り上げるGozaliらの論文は、まさにその問いに正面から向き合った研究です。

研究の背景―「赤ペン」から「チャットボット」へ

Imelda Gozaliはインドネシアのウィジャヤ・マンダラ・カトリック大学とマラン国立大学に所属する研究者で、フィードバック・リテラシーの研究を専門としています。共著者のAlberik Ryan Tendy WijayaとAnita Lieも同大学の教員であり、残る二名のBambang Yudi CahyonoとNunung SuryatiはマランのUniversitas Negeri Malangに籍を置く言語教育の研究者です。この研究はGozaliの博士論文プロジェクトの一環として実施されており、研究者自身が授業の担当教員でもあるという、いわば「授業しながら研究する」という立場から生まれた知見です。そのため、実験室的な環境ではなく、生きた授業という泥臭い現場の声がデータの随所に滲み出ており、それがこの論文の読み応えのひとつになっています。

論文が掲載されたのはThe JALT CALL Journalの2024年第20巻第1号で、DOIは10.29140/jaltcall.v20n1.1200です。JALTはJapanese Association for Language Teachingの略称ですが、同誌は日本に限らず広くアジア・太平洋地域のCALL(コンピュータ支援言語学習)研究を扱う査読誌であり、日本の英語教育関係者にとっても身近な媒体です。

研究が実施されたのは2023年2月から4月、つまりChatGPTが世界中で話題になり始めた時期と重なります。インドネシアのスラバヤにある私立大学の英語教育学科に在籍する2年次生18名が対象で、「Recount and Narrative Essays(記述・物語文エッセイ)」という必修科目の授業中に、ChatGPT、Grammarly、Quillbotという三つのAWE(Automated Writing Evaluation―自動作文評価)ツールを使った自己評価活動が行われました。データは半構造化インタビュー、省察的ジャーナル、そしてGoogle Docsで管理された学習eポートフォリオから収集され、分析にはNVivo12というソフトウェアが用いられました。