はじめに―「やってみた」を学術論文にする意味

生成AIをめぐる教育現場の議論は、2022年末のChatGPT登場以来、驚くほど速いペースで展開してきました。「使わせるべきか、禁止すべきか」という二項対立から始まり、今では「どう使わせるか」という実践的な問いへと軸足が移りつつあります。ただ、その「どう使わせるか」を語る声の多くは、研究者や政策立案者のものであり、実際に授業の中で試行錯誤した教員と学生の生の声は、意外なほど少ないのが現状です。

今回取り上げる論文、Bedington, Halcomb, McKee, Sargent, & Smith による “Writing with Generative AI and Human-Machine Teaming: Insights and Recommendations from Faculty and Students”(Computers and Composition, 2024)は、まさにその空白を埋めようとする試みです。米国ミシガン州のMiami Universityで2023年春学期に開講された「医療系専門ライティング」の授業を舞台に、担当教員のHeidi A. McKeeと受講学生4名が、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)との一学期間の格闘を、それぞれの視点から率直に書き綴っています。

著者構成そのものがすでに異色です。査読論文の著者欄に学部生が4名並ぶことは、少なくとも日本の学術誌ではほぼ見かけません。しかもこの5人は授業終了後、夏休みにZoomをつないでGoogle Docsで共同執筆したと明かしており、論文の形式そのものが「人間とAIの共創」ではなく「人間同士の対話的な共創」の産物であるという点も興味深いところです。