はじめに―教室の中の見えない格差

大学の授業で、同じテキストを読んでいるはずなのに、理解度に大きな差が出ることがあります。特に英語で専門科目を学ぶ環境では、この差はさらに顕著になるかもしれません。今回取り上げる論文”Reading speed and reading comprehension in an English-medium instruction context”は、英語を母語としない学生たちが英語で授業を受ける環境、いわゆる英語媒介教育(EMI)における読解力の実態を調べたものです。

筆者のDiane Pecorariはイギリスのリーズ大学の教授で、学術英語や第二言語ライティングを専門としています。共同研究者のHans Malmströmはスウェーデンのチャルマース工科大学の教授、Philip Shawはストックホルム大学の名誉教授です。三名とも北欧における英語教育の現場に深く関わってきた研究者たちです。

この研究が行われた背景には、スウェーデンの大学における急速な国際化があります。同国では修士課程のほぼすべてのプログラムが英語で提供されており、2022年から2023年にかけて、修士課程の学生の40%が113もの国々からやってきた留学生でした。つまり教室には、英語が母語の学生、スウェーデン語が母語で英語を第二言語として使う学生、そして英語もスウェーデン語も母語ではない留学生が混在しているわけです。