はじめに:電車の中で見る光景から

通勤電車に乗ると、多くの人がスマートフォンを見つめています。ゲームをしている人、SNSを見ている人、そして時折、英語学習アプリで単語を覚えている人の姿も目にします。かつては分厚い単語帳を片手に赤いシートで単語を隠しながら必死に暗記していた風景が、今ではポケットの中の小さなデバイスで完結する時代になりました。この変化は単なる道具の置き換えではなく、学習そのものの在り方を変えつつあります。

トルコのSivas Cumhuriyet大学で英語教育を研究するKübra Okumuş Dağdelerは、このモバイル機器を使った語彙学習(Mobile-Assisted Vocabulary Learning、以下MAVL)に焦点を当てた系統的レビュー論文”A systematic review of mobile-assisted vocabulary learning research”を2023年に発表しました。彼女自身、教師として学生たちが教室で紙の教材ではなくスマートフォンだけを使う姿を日常的に観察してきたといいます。辞書も、教科書も、すべてがモバイル機器の中に収まる時代を目の当たりにして、この分野の研究動向を体系的に整理する必要性を感じたのです。