教室の外で英語を話せない理由

英語の授業で文法テストは満点なのに、外国人と話すとほとんど言葉が出てこない。そんな経験をした人は少なくないでしょう。一方で、移民として日本に来た子どもたちは、学校に通い始めて数ヶ月もすれば友達と日本語でおしゃべりできるようになりますが、国語のテストでは苦戦します。この一見矛盾する現象を、私たちはどう理解すればよいのでしょうか。

Amsterdam大学のJan Hulstijn教授は、2011年から提唱してきたBLC理論(Basic Language Cognition理論)を、2024年の論文”Predictions of individual differences in the acquisition of native and non-native languages: An update of BLC theory”で大幅に更新しました。この理論の核心は、極めてシンプルです。言語能力を単一の尺度で測ることはできない。むしろ、話し言葉の能力と書き言葉の能力という、まったく異なる二つの次元で理解すべきだ、というのです。

Hulstijnは1980年代から第二言語習得研究に携わってきたベテラン研究者で、特に語彙習得や言語処理の研究で知られています。彼が2015年に出版した著書『Language Proficiency in Native and Non-Native Speakers』は、母語話者と非母語話者の言語能力を統一的な枠組みで理解しようとする野心的な試みでした。今回の論文は、その理論的基盤をさらに強化し、使用基盤言語学や神経ネットワーク心理学といった近年の知見を取り入れて再構築したものです。