私たちが英語を学ぶとき、脳の中では一体何が起きているのでしょうか。海外に留学して日々英語に囲まれながら自然に言葉を身につけていく場合と、日本の教室で文法書と向き合いながら勉強する場合とでは、実は脳の働き方がまったく異なっているのです。今回取り上げる論文は、この興味深い違いを最新の脳科学技術を使って明らかにしようとした野心的な研究です。

ペルーのUniversidad Nacional de San Agustin de ArequipaのMargit Julia Guerra-Ayalaらによるこの系統的レビュー”Implicit and explicit processes in language acquisition and learning: A systematic review of neuroimaging studies”は、2015年から2024年までの10年間に発表された神経画像研究を丁寧に精査し、英語の第二言語習得と外国語学習における脳の活動パターンの違いを浮き彫りにしています。彼女たちは膨大な文献から最終的に18の主要研究を選び出し、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)、EEG(脳波計)、fNIRS(機能的近赤外分光法)など、さまざまな脳科学的手法を駆使した研究成果を統合しました。

研究チームの背景と問題意識

筆頭著者のGuerra-Ayalaは教育心理学と心理言語学を専門とする研究者であり、共著者のGretel Emperatriz Zegobia-Vilcaは文学・言語学の修士課程に在籍する若手研究者、そしてClaret Aurelia Cuba-Raimeは同大学の文学・言語学部門の主任教授です。この三人の研究チームは、南米という英語非母語圏に位置しながら、グローバルに通用する英語教育の在り方を模索する立場にあります。

彼女たちが特に注目したのは、「第二言語(L2)」と「外国語(FL)」という用語の区別です。この二つはしばしば混同されますが、実は本質的に異なる学習環境を指しています。L2とは英語圏の国に住みながら日常生活の中で自然に英語を習得していく状況を指し、FLとは日本のように英語が日常的に使われない国で、主に教室という限られた環境で英語を学ぶ状況を意味します。この区別は単なる言葉の問題ではなく、脳の働き方そのものに関わる重要な違いなのです。