この研究が問いかけること

大学で外国語を専攻し、留学まで経験したのに、就職後はほとんど使う機会がなくなってしまった――そんな経験を持つ人は少なくないでしょう。あれほど苦労して身につけた語学力は、使わないまま時間が経てば消えてしまうのでしょうか。それとも、どこかに残り続けるのでしょうか。Tracy-Venturaら(2025年)がLanguage Learning誌に発表した論文”Is second language attrition inevitable after instruction ends? An exploratory longitudinal study of advanced instructed second language users”は、まさにこの問いに正面から向き合う、きわめて意欲的な縦断的研究です。

著者陣はいずれも第二言語習得(SLA)研究の第一線にいる研究者です。Nicole Tracy-VenturaはOklahoma State University、Amanda HuenschはUniversity of Pittsburgh、Jonah KatzはUniversity of California Los Angeles、Rosamond MitchellはUniversity of Southamptonにそれぞれ所属しており、国際的な共同研究として組み立てられています。この研究は「LANGSNAP(Languages and Social Networks Abroad Project)」というより大きなプロジェクトの一部であり、2011年から2013年にかけてイギリスの大学でフランス語・スペイン語を専攻する学部生56名の言語発達を追ったデータを土台にしています。今回の論文で報告されているのは、その卒業生を3年後(2016年)と6年後(2019年)に再び調査した、いわば「同窓会調査」とも呼べる追跡研究の結果です。